両親は私が5歳のときに離婚。私は父親の方に籍を入れることになった。
母が家を出て行ったときのことは何故か覚えている。
5歳の子供が「離婚」ということをハッキリと理解できていたとは思わない。しかし、いつもと雰囲気が違う後姿に、何か悲しいものを感じた記憶だけが鮮明に残っている。
母は18歳で私を産んだため、当時、高校には通っていなかった(または中退した)のだろう。私の父の勧めで、私を産んでから、夜間の高校に通っていた。
なので、夕方には学校へ行き、夜、私が寝ている間に帰ってきていた。
それも私が母親と一緒に遊んだという記憶がない理由のひとつだろう。
もうひとつの理由は、私の記憶の欠損にあると思う。
幼少期(実際の年齢はわからないが3歳か4歳のころだと思う)に私は風邪をこじらせて入院したことがある。
40度以上の熱が1週間以上続き、医者には「もう助からないだろう」と宣告された(らしい)。
しかし、奇跡的に命を落とすことはなかった。
その熱の影響なのか、それ以前の記憶が全く私にはない。
まぁ、熱を出そうが出すまいが、5歳以前の記憶なんてほとんどの人がないとは思うが・・・。
古いアルバムを見ると、母と写った写真も数枚あるが、「写真の中の母」しか私は知らない。
たったひとつの母の記憶は、夕焼けの中、かばんひとつ片手に、家を去っていった母の背中だけ・・・。
