おばあちゃん(2) 〜最初の分岐点〜

私がゲームをしながらコタツでウトウトしていたときのこと。
私の後ろでは、親戚が集まり、おばあちゃんと何やら話し込んでいた。

「萌乃ちゃんがいるし・・・。」
「大丈夫。萌乃ちゃん寝てるみたい。」

・・・ぼそぼそと話す声が聞こえる。
どうやら、私が聞いては不都合な話をしているらしかった。
仕方がないので、寝たふりをすることにした。

「で。考えてくれましたか?」
と、親戚のおばさんAが、おばあちゃんに尋ねる。
「ええ。・・・でも、ここを離れるのは・・・」
おばあちゃんがぼそぼそとつぶやく。
「でもね。いい話じゃないですか!長男が面倒見てくれるっていうんですから。長男さんは立派な会社に勤めてるし、きっと今よりいい暮らしができるわよ!」
と、親戚のおばさんB。
「・・・いい暮らしとか・・・。今でも生活には困っているわけじゃないし。」
と、おばあちゃん。
「長男さんのところだったら、長男さんの嫁がいるし、のんびりできると思いますよ。」
と、親戚のおばさんA。
「でも・・・。住み慣れたここを離れて、東京へ行くっていうのが・・・。」
と、おばあちゃん。

こんな会話を聞きながら、当時8歳か9歳そこらの私は、小さな頭をフル回転させます。寝た振りしながら(笑)

どうやら、話をまとめると、長男(うちの父の兄)が、おばあちゃんを引き取りたいと言っているらしい。長男は、大阪ではなく東京で仕事をしているので、おばあちゃんが東京へ行ってしまうという話しのようだった。
話を聞いていると、「親の面倒は本来、長男が見るべきだ。」とか、「長男はいい会社に勤めているから」とか、なんだか体裁ばかりの大人の会話で、おばあちゃん本人や、今ここでおばあちゃんと一緒に住んでいる私たちの意見は丸無視している感じで腹が立ってきたのを覚えている。

一通り会話を終えた親戚のおばさんたちが去った後、何もなかったかのように私はゲームをする。
おばあちゃんもいつものように、夕飯の支度をする。

いつもと同じのようで、なんとなくぎこちない1日が過ぎようとしていた・・・。

できればこのまま、いつもどおりな毎日を、おばあちゃんと過ごしていきたいのに・・・。

そんな願いもむなしく、おばあちゃんの東京行きが決定した。

おばあちゃんも、住み慣れた土地を離れるのに抵抗があったし、もちろん、私や私の父も反対した。
このころ、おばあちゃんに痴呆が見られるようになっていた。
それもあり、親戚の人たちはこぞって長男のところへやろうとしていたのだが、そんな状態で住み慣れないところへ行って良くなるなんて思えない。
ましてや、長男の家には私と同じくらいの年の子供が二人いる。血のつながったおばあちゃんといえども、年に1回しか会わないおばあちゃんだ。急に痴呆のおばあちゃんが家に来て、毎日顔を合わす。どう思うだろう。

東京へ行くことが、本当におばあちゃんにとって良いことだとはどうしても思えなかった。

思えなかった・・・けれど、子供の私にはどうすることもできなかった。

そして、おばあちゃんはいなくなった。


update 2008年11月20日 15時40分 | ■小・中学生時代■


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